物語に消化不良感はあるものの、このヒョンビンは一見の価値あり!!
「アルハンブラ宮殿の思い出」作品メモ
ジャンル:ファンタジー、アクション
放送年:2018年~2019年
放送局:tvN
脚本:ソン・ジェジョン
主演:ヒョンビン (「シークレット・ガーデン」「愛の不時着」)
正統派美男美女を主演に据え、脇を固める役者も芸達者たち、そして明らかにお金がかかっていそうなスペインロケとCG・・・そんな作品にもかかわらず巷では「ヒョンビンの無駄遣いでは」とも言われる本作。果たして本当にそうなのだろうか・・・?
ドラマの意図が・・・?
物語のベースレイヤーはざっくり言うと「ボーダーレスになっていくリアルと拡張現実(AR)」。見始めて前半は斬新な設定とゲーム画面にワクワクもしていたのだが、結局劇中最大の謎が全く解決されずに終わってしまい、煮え切らない思いをした視聴者は多かったのではないだろうか。
そもそもどんな視聴者をターゲットにしていたのかも謎だ。
ヒョンビンのファン層からすると、もっと甘いロマンス要素を期待していたと思うし、ヨーロッパ・古城ファン層にとっては(そのような人がこのドラマを見るとは思わないが)、前半のスペイン部分でさえも駅や公園など限られた場所しか見られず、しかも後半は韓国が舞台だし、ゲーム・VRファン層にとっては(そのような人もこのドラマを見るとは思わないが)、全ての謎をバグで片づけられてはたまったものではないだろう。
では、このドラマが観るに値しないのかというと、決してそんなことはないと思うのだ。
危機迫った状況での最後のキス
主人公のジヌ(ヒョンビン)はお世辞にも心優しい男性とは言えない。
ヒジュ(パク・シネ)に対して突き放す態度をとったり、冷たい言葉をぶつけたり。
ドラマ設定上も少し年の差がありそうな二人だが、年下のヒジュがひたすら寛容かつ献身的でいることで二人の縁を繋いでいるようで、見ていて可哀そうになってくる。
二人の想いが通じ合ってからも甘いムードはあまりなく、そんなことより早くゲームのレベルアップを、と先を急ぐジヌだ。
男性が好きな女性に振りむいてもらうまで追いかけるのが韓国ドラマの定型なのに、これは珍しいパターンであるし、ある意味結構リアリティがあるとも言える。
このドラマがあまりラブストーリーに重きを置いていないが故に、甘いラブシーンは数少ないが、だからこそ二人の最後のキスとなる試着室のシーンは胸を打った。
ヒョンビンを考える。
ヒョンビンは20代で「私の名前はキム・サンスン」、30代で「シークレット・ガーデン」、40代で「愛の不時着」と大ヒット作があるのだが、その他を見てみると、あまり作品に恵まれていない感じがしている。
(とはいえ、10年に一度これほどの大ヒットがあれば、それで十分とも言えるが。)
韓国芸能界の中でも屈指のビジュアルと高い演技力があるはずなのに、もっと面白い作品は来ないものか・・・と思いを巡らせていたら、実はそのビジュアルの良さが逆に役柄を狭めているのかもしれないと思い当たった。
スターオーラが出すぎていて、しがない中年の役どころは無理だろう。カッコよすぎるのも罪だ。
しかし年齢的にも財閥御曹司役は卒業だろうし、そのせいか近年はアクション系に舵を切っているように見えるが、本当はもっと「カッコいい」を脱いで、ダメ男や滑稽な役柄もやってみてほしい。
その点で言えば、この「アルハンブラ宮殿の思い出」のジヌの、イケイケのIT経営者からどんどん孤独に堕ちていく感じや、ちょっとヤな奴で人を冷たく突き放すキャラクターによって、ヒョンビンの新境地が開拓されたのかもしれない。
ビジュアル的にも、「愛の不時着」は北朝鮮の将校という役柄もありちょっとコスプレ感があったが、この「アルハンブラ宮殿の思い出」では等身大のアラフォー男性ヒョンビンのビジュアルが見ることができる。
だから、本作はドラマとしては消化不良感はあるものの、今のヒョンビンの魅力が堪能できる作品であり、私はこの作品のヒョンビンが(今のところ)一番好きなのだ。