韓国ドラマよしなしごと備忘録

韓国ドラマの個人的感想メモです。ラブコメを中心に。あらすじは書いていませんが、ネタバレする部分もあります。

韓国ドラマ感想「五月の青春」

びっくりした!本当に良作で。もっともっと話題になってもいい作品。

畳みかけるように襲ってくる悲劇、最後には救われるよね?と祈るような気持ちで観ていたのだが・・・。

「五月の青春」作品メモ

ジャンル:ヒューマン、ロマンティック

放送年:2021年

放送局:KBS2

脚本:イ・ガン

主演:イ・ドヒョン (「18アゲイン」「ザ・グローリー」)

   コ・ミンシ (「The Witch 魔女」「Sweet Home」)

 

物語のスタートはラブストーリーの王道パターンなのだが。

ドラマの舞台は1980年の光州。光州事件の起こった5月の数週間のできごとだ。

不勉強ながら私は光州事件についてほとんど知らず、このドラマの鑑賞と並行して少しネットで調べた程度だ。

わずか数十年前まで韓国は軍事政権であったことは知っていたが、ドラマで描かれている状況が事実に近いのだとしたら、1980年の隣国の出来事とは思えぬ凄惨さだ。

 

市民と軍隊が衝突する5月18日より少し前に、ファン・ヒテ (イ・ドヒョン)とキム・ミョンヒ (コ・ミンシ)が出会うところから物語はスタートする。

実業家令嬢のスリョンは親が決めたお見合いに行くのが嫌で、親友のミョンヒに留学渡航費を都合する代わりにお見合いに行ってほしいと頼む。

そのお見合いに現れたのが、保安隊対共課長の息子、ヒテだった。

 

薄幸感満載のミョンヒとちょっとネアカなヒテカップル。

渋々代理お見合いに行き、ところが予想外にも相手に気に入られてしまい、そうこうしているうちにこちらも相手が気になっていく・・・という私の好きなラブコメ王道パターン。

いいね~と思いながら見ていたのだが、このドラマではそれはハッピーロードの入口ではなかった。

 

お互いの気持ちを確かめ合い、絆が強くなればなるほど、危険に晒されていく二人。同時に光州自体も不穏な雰囲気を深めていく。

 

まあ、とにかくミョンヒの「全ての不幸を背負ってます」感がすごい。

ドラマの最初の方は血色良かった彼女の顔が、後半以降終始血の気がなくなり、顔にかかる前髪が疲れた感じを増幅させている。

ヒテも複雑な家庭環境で、且つ拭えないトラウマがある設定なのだが、イ・ドヒョンの雰囲気がそうさせるのかミョンヒほどの薄幸感はなく、ちょっとネアカささえ感じさせる。

しかしそれが良かった。二人とも薄幸感満載ではとても辛くて観ていられなかっただろう。

ちなみにストレートジーンズにシャツをインする80年代スタイルでも、イ・ドヒョンはカッコいい。

 

さて、ドラマ後半は数々の悲劇がこれでもかと続くのだが、実は回避できるタイミングがいくつもあったのに、その分岐点の度にミョンヒは危険な方の選択をするのだった。

ミョンヒのみならずミョンヒ父やミョンヒ弟も結構無鉄砲で、ドラマのラスト、市街地で銃撃戦をしているような状況にもかかわらず、ミョンヒ弟が実家に帰ろうと走り出す。

それがラストの悲劇を招くので、正直ちょっとイラっとしてしまった・・・。

子供だとはいえこの緊迫した状況はわかるだろうに、もう~。

 

オ・マンソクを考える。

実はこのドラマを見ようと思ったきっかけは、オ・マンソクが出ているからに他ならない。

「愛の不時着」を観たときに、ヒョンビンよりも気になってしまったオ・マンソク。

そんなオ・マンソク、今回は保安隊対共課長ファン・ギナムとして登場。すっかり悪役が板について、いや逆に板につきすぎてしまって、本作の前半はちょっと悪役のステレオタイプをなぞってない?と思ってしまった。

 

しかし、渇望していた出世の雲行きが怪しくなり、息子ヒテも自分の思い通りにならず・・・と徐々に歯車が狂い始め、追い詰められていく辺りから、オ・マンソク先生の演技力が炸裂。

命乞いをするヒテの友人へゴンをこん棒で殴り殺すシーンは、そんな追い詰められた心理を一心不乱にこん棒を振り下ろす狂気で見事に表現されていた。オ・マンソク先生、流石です!

 

更にその後、次男ジョンテが不慮の事故で打たれ、駆け付けた時の「ジョンテ!」という呼び声に一種取り戻した人間性をみせた。

 

「愛の不時着」のチョ・チョルガンは一言で表すと「執念」だったのだが、その執念の源が何なのかいまひとつはっきりしなかった (演技の問題ではなく設定の問題だと思う)。

一方、本作のファン課長は「狂気」。出世の為なら手段を選ばず、人の心を捨てて生きてきたのだが、最後に一瞬取り戻したときには時すでに遅し、彼の周りには誰もいなくなっていたのだった。

 

イ・ドヒョンの父親役にはちょっと若過ぎやしないかと思うくらい、実は(?)二枚目で素敵なオ・マンソク。インタビュー動画を見ると非常に気さくで明るい人のようなので、今度はそろそろコメディーを期待したい!