間違いなく今まで見たドラマの中で一番心の琴線に触れた作品である。
感動という言葉だけでは表現できないほど感情を揺さぶられた。
こういう作品との出会いがあるから、韓国ドラマはやめられない。
「ブラームスは好きですか?」作品メモ
ジャンル:ロマンス
放送年:2020年
放送局:SBS
脚本:リュ・ボリ
主演:パク・ウンビン (「恋慕」「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」)
キム・ミンジェ (「偉大な誘惑者」「浪漫ドクター キム・サブ」)
好きなこと、できること、求められること。
人生や仕事について思い巡らす時、いつもこんなことを考える。
①自分の好きなこと
➁自分のできること
③周りから自分に求められること
この①➁③を満たした仕事ができている人が羨ましい、と。
今で言えば大谷翔平か。彼はこれら全てを、しかも高レベルで満たしていて、それゆえ人々は彼を天才と呼ぶ。
しかし一般の多くの人は、どれか二つくらいをなんとなくバランスとりながら、「まあこんなところかな」と折り合いをつけているのではないだろうか。
本作品の舞台は音楽大学、しかも卒業間近でこれからクラシック音楽を続けるのか否かの分かれ道、まさに前述の①➁③をどう折り合いをつけるのかを迫られている若者たちのドラマだ。
幸せになるためには何を選ぶ?
いわゆる音楽英才教育を受けてきてはいないが、バイオリンをこよなく愛すソンア (パク・ウンビン)。
彼女は①好きだけが圧倒的に高く、残念ながら➁才能と③周りの期待がない。
一方、既に世界的なコンテストで実績を出しているピアニストのジュニョン (キム・ミンジェ)は➁と③は突出しているものの最近は陰り気味、そもそも好きでピアノを弾いていたわけでもなかった。
音楽に対して真逆な立場にいる二人は、一緒にいることによって傷つきながらも自分の足りない部分に向き合い、そして何が自分の幸せかを見つけ出していくのだった。
パク・ウンビンの演技力はもはや説明不要ではあろうが・・・
自信がなく内気なソンア、音楽と恋愛の両方で傷つくソンア、そこから一生懸命に立ち直り新しい一歩を踏み出していくソンア・・・おとなしいながらも一本芯の通ったソンアという人物の立体感は、パク・ウンビンでなければ出せなかったはずだ。
ひさしぶりに「サランヘヨ」で泣きました。
さて、韓国ドラマに必ず一度は出てくる「サランヘ (=愛してる)」。
あまりの乱発ぶりに、(おそらく)言ってる方も見ているこちらも「サランヘ」に対して「無」の感情になっていた。
ところが本作品での「サランヘ」を見て、この言葉はまだまだ使い方と言い方次第で重みを持たせることができるのだとわかった。
まず一つ目は、ソンアが自分のバイオリンと、(その時点で好きだった)友人のドンユンとにそっと三回言う「サランヘ」。
はにかみながら、でも愛情いっぱいに囁くソンアが本当に愛おしい。
二つ目は、ソンアの卒業公演で伴奏したジュニョンが、終演後の楽屋でソンアに言った「サランヘヨ」。
ソンアと別れたことにより彼女がいかに自分にとって大切だったかを実感したジュニョンから思わずあふれ出した言葉だ。
色々ドラマを見てきた中で、こんなに静かで、だが重みのある「サランヘヨ」は他にない。
ちなみに私は本作品の最初から終わりまで終始泣きっぱなしであったが、とりわけ財団理事長の葬儀からソンアの卒業公演までのくだりは何回見ても号泣だ。
本作品は単に恋愛物としてもトップクラスの出来なのだが、好きなこと、自分のできること、自分のやるべきことを、どう折り合いをつける?という問いかけが私に深く刺さり、そういう意味でもこの作品は非常に印象深いものとなった。